〔要約 ２ 〕

心の発達と複雑性PTSD

辻の提唱する治療精神医学では、心の原点を「原（初的）体験」primal experienceと呼んでいます。
それは臨床経験から抽象された概念で、最も近い対応物は「子宮内（胎内）での体験」です。
それは、フロイトが一次ナルシシズムと名づけた事態とも別のものではありません。
原体験心性はとても傷つき易く、注意深く抱え育てられる必要があります。
それは、傷つかないようにではなく、傷つきを受容できるように、です。
養育に於いてそのようなサポートが不幸にして得られないと、
それはトラウマとして生々しい現実のまま隔離保存され、
子供は、更なる傷つきを回避する為に過度に防衛的となります。
それは生物としての人間にとっては全く自然で正当な反応です。しかし、
原体験心性に主導されたそのような過度の防衛は、主体的自己の成長を妨げます。
大半の「心の臨床事態」は、そのような過度の防衛とその部分的/全面的破綻の結果に他なりません。

⇒心の病理の理解モデル